まず、私がこの奏法を知るきっかけになった事をお話したいと思います。
結婚前には、音楽教室にて教えたりもしてましたが、結婚出産の間全くピアノを弾いていませんでした。
もしかしたら、このまま弾かないで一生行くのかも、とも思ってたくらいでした。(お寺に嫁いだ、ということもありますが)ピアノの蓋も一回もあけなかったと思います。それどころでは無かったので。。6年くらいでしょうか。
ところが、急にある日、音楽への情熱が再燃し、
やはり弾きたい!と、思うようになりました。
でも、教える事などはせずに、しかし弾くからには真剣に
自分が素敵だと思っているピアニストのような本物の演奏に
死ぬまでに1ミリでも近づけるようにやってみよう!と思ってました。
そして、練習を再開したはいいものの、弾き方のせいか、頭が鈍ったせいか
脳がギシギシ音を立てるような状態。練習が終わったら、腕も肩もなにもかもが
熱をもったようになり、痛い。朝起きたら、指がバネ指のようにカクン、カクン、となる。
でも、恐ろしい事に、それは訓練した証拠だわ♪くらいに、その時点でも思っていたのです。
脱力、という言葉が良く聞かれるようになりましたが
その時点では、脱力という事さえ頭に浮かんでいなかったような。
でも、練習するとなると、ムキになって何時間もやってしまうタイプなので
このままの練習方法では駄目なのでは?!と思ったりしていました。
そして、色々なピアニストの演奏を聴いたり見たりしているうちに、ロシアのピアニストの弾く音がなんだか自分には魅力的に聴こえる事に気付きました。同じピアノを弾いているのに、なんで他国や日本のピアニストとは違うのだろう?!と。(フォローしますが、その頃はそう思ったのですが、他の国にも日本にも同じようにいいと思う人います)
あと、練習再開の時期と同じくして、脱力、とか重量奏法、などという事を良く耳にするようになり「もしかして、これでは?!」と思って、調べまくりました。
そうして、ロシアン奏法なるものがある事を知り、やっぱり!!弾き方があるんだわ!!と。
(これもフォローすると、重量奏法と呼ばれるものとはちょっと違う部分もあるようです。脱力に関しては奏法に限らず、またはピアノに限らず、スポーツでも料理家でも、脱力部分と適宜力を入れる部分とを使い分けるのは必要です。)
すると、奇遇にも住まいの近くに、その奏法を教えてられる先生がいると知りました。
自分の子供には、最初からそれを身につけて欲しいとの思いも有り、子供も自分も教えていただくことになりました。
レッスンを受けてみて、たった1音でも、響きがこんなにも違うのか!!!と衝撃を受けました。
音の糸が空中にあるのが目で見えるかのような、音。
倍音のふくらみ。
逆に、違う弾き方で1音を弾くと、途中でハタと切れてしまうような音だったり、耳に当たる音だったり。。
あきらかに、違いがある。
そして、自分が良いとおもったピアニストさん達の音の違いは、これだったんだと確信もちました。
習ったからと言って、すぐに癖が直るわけではありませんし
先生も、3年はかかると考えた方が良いとおっしゃっていました。(意識しなくともそう弾けるようになるまでにはという事ですが)
今は、やっと実感として自分の感覚として、ついたように感じます。
でも、まだまだこれからです。
実は、自分は勉強を続けてましたし、この先も続けるつもりでしたけど、教える事はもうしないつもりでした。
が、先生が「子供が大きくなってきたんだから、この先どうするの?教える事は考えてないの?」
と言ってくださって(先生は思いつきでおっしゃっただけかもですが。。)そうか、、と、ふと心に灯がともりました。
小さいお子さん、ピアノを始めるお子さんに、最初からこの奏法を身につけさせてあげることはとても重要なんじゃないか。
プロになるとか、ならないとか、才能有る無しとか、そういう問題ではなくピアノを弾くという事は誰でも同じ動作です。
等しく、ピアノを弾く人はこの弾き方を知るべきでは?!と思ったんです。
先生は、そう思われたから、そういうテキストを作られたので。。。
そして、私は個人レッスンとは別に、先生のロシアンメソッドピアノ研究会にも入りました。
他のピアノの先生方と一緒に、自分たちの奏法の見直しとともに『子供達へ教える際どのように伝えたら理解できるか』や
『ある音を出そうと思ったら、どのように弾けばそのような音を出せるのか』『曲の時代背景、作曲家による弾き分け』などを先生から伝授していただいています。
この弾き方はどのピアノを弾く方も身につけられたらいいと強く思うので。。
こういう立場の私ではありますが、自分が知り得たロシアン奏法の事を書いておこうと思います。
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ロシアンメソッド、ロシアン奏法とは、、一口に言うのはとても難しいですが、学んだり色々と読み、聞きした事から、自分なりにこうだと思った事を書いてみます。
まず、現代のピアノ(ピアノは、最初は今のようながっしりとした造りの大きな楽器ではありませんでしたが、改良を重ねられ、現代のピアノの形になっています。そういった意味での現代のピアノ、です。)
を、無駄な力をかけたり、体の構造を考え、無駄な動きをせずに、体、腕、指をうまく使って良い音を鳴らすために、生まれた奏法、だと言えると思います。
つまり、リストや、ショパンが活躍した頃に、ピアノの改良はぐんと進んだのですが、そういったロマン派の曲の時代の曲以降を弾くためには必要な奏法だと言えるのでは?と思います。
(だからといって、バロックや古典が弾けないわけではありません。時代や作曲者によっての弾き分けができます。)
そして、ロシアの音楽院にて、それが確立されて、師から弟子へと伝わっています。
また、別でも書きましたアメリカのジュリアード音楽院を創設されたジョセフレヴィーン氏もモスクワ音楽院出身の方で、モスクワ音楽院を設立したアントンルビンシュタインの弟子です。
(
レヴィーンの著書について)
このように、ロシアだけではなく、世界中にモスクワ音楽院から出た偉大な先生が、学校を作ったり教授になったりして、他の国でもそのような弾き方は広まっています。
国際コンクールを最近は動画で見られるので、色々な国のピアニストの演奏の仕方を観察してみてますが、この弾き方の人もいれば、今でも昔流の弾きかたの人もいます。
お!この人の音はロシアンっぽい!と思って、見てみると、やはりそういう弾き方だったりしてその人が習った先生をプロフィールなどで調べてみると、やはりロシア系の先生についてられたりします。
ただ、一口にロシアン奏法、と一括りにするのは若干乱暴かもしれません。
ロシアもモスクワ音楽院のみが音楽の学校ではありませんし、さらにモスクワ音楽院の中では派閥のようなものがあり、どの系列の師匠かによって様々違いが生まれてるようです。
ここでは、私が伝えていただいた事を書いていますし、それが全部を説明している事に至ってない事をご了承ください。
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演奏の音色の特徴としては、まずは音の響きが豊かで、深みがある事。
そして、ピアノは構造上は打楽器ともいえる楽器なのですが(ハンマーで叩いて音を出しますので)それを感じさせないで、レガートで歌うようにピアノを歌わせて弾ける事。
大きな音量でもピアニッシモも、さまざまな種類の音色を弾き分ける事。
音が出た先の音、、も重要なように思います。
身体的には、箇条書きにしてみると。。
肘をハの字のようにまげて弾かない(どちらかといえば、逆)
手首はやわらかく
腰はしっかり据える
腕全体のしなりを使い
指は親指側対その他の4本の指というグループ分け
指の第2関節だけを上げ下げさせるのではなく、第3関節から弾く
手のひら側を意識する
指は他の指を弾くときにも全て鍵盤の上に
平行移動
手の角度は真上から見ると、若干斜めに置いている
鍵盤に対する力の方向は、垂直に下へではなく、向こうから手前斜め下に向かってるようにかける
手首や手のタッチや上げ方によって、音の終わりぎわの音を良く聴きコントロールする
と、文字で書くには、細かいニュアンスなどは伝わりにくく、難しいです。
が、こういった事により、体や指に、へんな力を入れてしまわずに動かすので、ロスも減りますし、音も良くなりますし、弾きにくいパッセージも弾きやすくなります。
これはあくまでも、体や指の使いかたの一部分ですが、きっと大切なのは、それでもってして、音楽の深い部分やイメージを音にして演奏する事でしょう。
そのためには、音符や楽譜を見たまま弾くだけでなく、曲の時代背景や作曲家について知ったり、絵や景色を見たりなどを見たりの経験がイメージを増やす事になり、演奏に繋がります。
聞いた話では、モスクワ音楽院では、人間性や精神性、美術や詩などのアート、など多岐に渡って学び、師匠からは人間性も含めた音楽家としての様々な事を伝えられてるそうです。
そもそも、ロシアでは、ピアニストになろうとする場合は趣味などという選択肢は無く、職業として成功するであろう子供を全ロシアから才能を発掘してきて子供の頃からシビアにその道に進むので、そもそもが、日本のお稽古ごととは違うので、、スタートからして違うのですが(^^;)
そこは、置いておいて。
ピアノを演奏する、という事は趣味でもプロでも
子供でも大人でも、上手でも下手でも
行動としては同じ事をする訳です。
ピアノを弾く、んですもん!!
求めるものは、美しい音、美しい音楽であることは
どの立場であっても同じですから。。。
この奏法を身につける事は、そのためには最適だと思います。
私が習っている、松田紗依先生は、イギリスへ留学なさった時に(その頃、ピアノ奏法で迷ってられたそうです)
スラミィタ.アロノフスキー先生というロシア人の先生に出会い1音から弾き方を学び直されたそうです。
松田先生の作られたテキストの前書きにアロノフスキー先生の言葉が書いてありますが「語りかけるように、1音をひかねばなりません」とおっしゃっていたそうです。
松田先生に習っていて、やはりそれは先生も常々おっしゃる事と繋がります。
音を聴き入って出してごらん、とおっしゃる、その事だと思います。
それは、当たり前のようでいて、その部分をとっぱらって指で弾くだけになっている奏者はいっぱいいます。聴衆の立場として聴いていても、プロの人でもおられるように思います。
そのちょっとした「聴き入るかどうか」の違いって、めちゃくちゃ大きいです。
その部分は大事に音を聴き入っているかどうか、つまり音が発音した先の音まで聴けてコントロールしているかどうかなのかな?と思います。
師匠から弟子へ。。の話に戻りますが
モスクワ音楽院の中で、たくさんの素晴らしい弟子を育てあげられたアレクサンドル・ゴリデンヴェイゼルという方がいらっしゃいました。
アロノフスキー先生は、その方と、その弟子のグレゴリーギンズブルグにモスクワ音楽院では習っていた方です。
アレクサンドル・ゴリデンヴェイゼル→グレゴリーギンズブルグ→スラミィタアロノフスキー→松田先生というわけなんだな。。。と思います。
そして、私は、実は、ギンズブルグさんが大好きなのです〜〜〜〜〜!
結構悲劇の人で、、もの凄い、信じられない程のピアニストでありながらソ連の時代だったために、西側諸国に出る事もなく知られる事もなく有名にならず亡くなられた方なのですが。。
少し残っている音源や、動画など、これぞ、これぞまさに、求めていた音、演奏!と思うのです。
ギンズブルグさんの演奏その方が、まさか、繋がっているなんて(じーーーーーん。。。)
そして、松田先生に教えていただいていて、いつも、そう!この音!!と感動していて、先生の求めてられる音や演奏にも
すごく共感していたのですが、納得だなぁと思ってました。
あ!そして、アレクサンドル・ゴリデンヴェイゼルは、アレクサンドル・ジローティに師事
アレクサンドル・ジローティは、リストに師事してたんです。
なので、行き着く先はリストなんですって!!
なんか、壮大ですよね。。